SHU★EPISODE 01山本一成の選択。文:石川 雄介「俺は蹴が好きやし、イッシーのことも好きやから…。」
思わずはにかんでしまいそうな言葉を
寡黙な男が口にする。
この言葉に込められる深い意味とは。
重宝するプレーヤー
そんな呼び方は失礼だろうか。
しかし、彼のプレースタイルを見るとそれがしっくりくる。
どこに当てはめても、期待通りの活躍をしてくれる。
いつしか山本は、『助っ人』という看板を背負っていた。
そんな彼と蹴の間に事件が起きる。
当時、FC☆蹴では尻池克吉入団の準備が進められていた。
尻池と言えば、先の中山眞徳と同じ
『チキントリコ』のメンバーである。
そして、山本もまた、この一人であった。
それは、尻池のユニフォームを
注文している時のことだった。
「おれも注文しようかな…」
山本はこう言った。
それは決して冗舌でない男が振り絞った
想いだったのかもしれない。
しかし、キャプテンの石川雄介はこう答えている。
「そんな簡単に言ってほしくない」
互いの気持ちは、この時交わることは無かった。
“事件”を経てからも、
山本が『助っ人』という看板を降ろすことは無かった。
プレースタイルからもわかるが、
彼は職人気質で、自らの使命をきっちりと
こなそうとするタイプである。
だからこそ『助っ人』という使命を、果たそうとした。
『チームメート』でなく『仲間』ではない。
『敵』や『ライバル』とも
もちろん違う。
良くも悪くも、この少しドライな使命を
文句も言わず引き受けた。
簡単な気持ちで、チームには入ってほしくない。
そんな想いで言った。
だがしかし石川の中に“迷い”や、“罪悪感”が巡る。
参加のお願いをすることが多くなったある日。
「いつも助っ人扱いで悪いな。」
山本に言うと、山本は口を開く。
「俺は蹴が好きやし、イッシーのことも好きやから…。」
それはまるで石川が抱える“迷い”や“罪悪感”に
気付いていたかのような発言だった。
皆とは立場は違う、
しかし、それでも蹴に対する愛着がある。
自分の立場を全うする。それが彼の“選択”だった。
山本をチームに誘う決断をするのに、
そう時間はかからなかった。
戦力としてはもちろん、
自分を犠牲にして、献身的な動きに徹するメンタリティ、
チームや仲間に対する真摯な想い。
もはや欠かせない存在になっていた。
しかし、“タイミング”というものは、
なかなか人の思い通りにはいかないものである。
チームに誘うと決めた時、
幸か不幸か、彼にはチームが出来ていた。
そんな彼だが、しばらくの月日が経った後、
FC☆蹴への入団を決めることになる。
その決定打は、武中硬太の言葉ではないだろうか。
「今のままでも、十分仲間やけど、
蹴に入ってくれることで一生付き合っていける気がする」
『蹴のメンバー』として生きる。
助っ人ではなく、一生の仲間として。
それが、山本一成の選択。
チーム、仲間。
その重みを、
一番わかっているのは彼かもしれない。
今、“背番号0”が動き出す。
<完>
テーマ : フットサル - ジャンル : スポーツ